約 1,885,895 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3146.html
前ページ次ページヘルミーナとルイズ あのときから数えて、三度目の冬が訪れていた。 ルイズとヘルミーナはろくに人の手も入っていない、岩がごろごろと転がっている山道を登っていた。 日はまだ高い。この調子なら目的を果たすのに多少手間取ったとしても、今晩はテントの中で落ち着いて休むことができるだろう。 今更堅い床では眠れないなどというやわな神経は、両者とも持ち合わせていなかった。 「それでルイズ、道は大丈夫なんでしょうね。こんな物騒なところは用事が済んだらさっさとおいとましたいところなんだけど」 そう言ったのはヘルミーナ。 彼女は今年で二十三になるそうだが、現れたときの姿とあまり変わっていない。相変わらずの美しさと妖しさで周囲を惹きつけてやまない。 「そう願いたいわね。私だってこんなところまで来たのは初めてだもの、確証なんて持てやしないわ」 そう答えたのは手に地図を持って、ヘルミーナに先行していた桃色の髪の女性。 ――ルイズだった。 あれからだいぶ背も伸びた。ヘルミーナと出会った頃は彼女の方が十サントほど高かったのだが、今ではほぼ同じ身長になっている。 やせっぽちだった体型も、女性的な丸みを帯びたものへと変わっていた。 胸だけは水準以下であるが、ほっそりとした体つきとのバランスが美しく、それは十分に男を惑わせ得るものとなっていた。 だが、何よりの変化は、その目であろう。 もとよりつり目がちだった目は一段とその鋭さを増し、かなりキツイ雰囲気を放っている。 見たものを震え上がらせるような冷酷な目は、以前のルイズにはないものだった。 二人とも旅装を纏っているが、それが野暮ったい印象は与えない。 一般的に動き回るに向いていないメイジや僧侶用のローブを大胆に改造した着こなしは、それだけでセンスの良を感じさせる。 色はヘルミーナは紫を基調として、ルイズは黒。それぞれ二人のイメージと相まって、彼女たちの魅力を最大限に引き出していた。 「巣立ちを迎えていない火竜の幼体、本当に見つかるのかしら」 「こんな眉唾な情報を見つけてきたのはあなたじゃない。でも、もしも本当なら幼体の『竜の舌』、とても貴重だわ」 この二人、一般的なメイジとは違う、少々特殊な存在であった。 曰く、この世界でたった二人の『錬金術師』。 錬金術の練金は土魔法『練金』を意味するものではない。 素材を調合し、全く違う効果を持つ様々な薬やアイテムを作り出す研究者の総称、それが錬金術師である。 それがヘルミーナが召喚された翌日に、ルイズに語って聞かせたことだった。 そして今、彼女たちは旅の空の下にいる。 二人が出会った翌日、ヘルミーナは自分が錬金術師であること、材料の収集中に魔物に襲われ、その先にあったゲートに飛び込んで難を逃れたこと、そして自分は親代わりであった先生を捜して旅をしていたことをルイズに話した。 一方、ルイズはここがハルケギニアという世界であること、ヘルミーナは異世界から来たかもしれないということ、この世界に錬金術というものがないことを伝えた。 この頃になるとルイズも本来の冷静さを取り戻し、お互いに必要な情報の交換が行うことができた。 特に、お互いの関心事については念入りに話し合った。 ルイズにとっては、錬金術のその技。人工生命や死者蘇生、聞いたこともないような途方もない錬金術の奥義の数々。 ヘルミーナにとっては、異世界の存在とそれに付随する様々な未知なる事柄、そしてルイズが喪ったという少年の話。 そうしてお互いの関心事が分かったとき、ルイズはヘルミーナに申し入れたのだ。 『自分に錬金術を教えて欲しい』と。 ルイズのこの申し出をヘルミーナはしばし検討し、結果として承諾した。 そこにどの様な思惑があったのか、神ならざるルイズには分からなかったが、確かなことは自分が一筋の光明をつかんだという事実であった。 ヘルミーナは自分が元の世界へ戻るまでの間、ルイズに錬金術を教える、その代わりに自分が戻るための手助けをして欲しいと言った。 ルイズは一も二もなくこれを快諾し、この世界で最初の『錬金術師の弟子』となった。 そしてその日の夜、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは学院から失踪した。 あれから三年、ルイズは一度もトリステイン魔法学院を訪れていない。当然ヴァリエール公爵家にも。 今、ここにいるのはただのルイズ。 貴族の名誉も、家族も、友人も、何もかもを捨て去った、ただのルイズであった。 「毎度思うんだけど、空飛ぶ箒ってこういったところでも使えれば便利じゃないかしら」 「仕方がないわ、あれはそういうものだもの。大ざっぱな移動はできてもこういうところを飛ぶのは向いていないわ」 ルイズの軽口にヘルミーナが相づちをうつ。 深い意味はない、毎度の愚痴と切り返しの応酬だ。 ルイズとヘルミーナは弟子と師匠、召喚者と被召喚者という関係にありながらお互い対等の立場をとっていた。 お互いが教師であり生徒、そんな二人は主人と使い魔の証である使い魔の契約、すなわちコントラクト・サーヴァントも済ませていなかった。 ルイズにとって使い魔とは生涯あの少年ただ一人であったし、ヘルミーナ自身も使い魔という立場を望まなかったからだ。 空飛ぶ箒の調合材料である風石の品質、その調合に使われる中和剤の元となるラグドリアン湖の水についてお互いに意見する。 いつも通りの大して実りもない雑談をしばし続けたあと、二人は目的地周辺に到着した。 「情報によればこの辺のはずね。ルイズ、準備は良い?」 「氷属性のブリッツスタッフでしょ。分かってるわ」 ルイズが背負った革袋から強烈な冷気を放つ杖を取り出すと、ヘルミーナも同様にそれを取り出して手に持った。 「標的はあくまで幼体だけ。もしも成体に見つかったら一目散に逃げる。良いわね」 「幼体を見つけたら二人でブリッツスタッフを使ってブレスを使われる前に倒す。手順は覚えてる、大丈夫よ」 彼女たち二人の目的は竜の舌、それも幼竜のそれだ。 竜の舌は錬金術の素材としても大変貴重なものであるが、その中でも幼竜のものとなるとその価値は跳ね上がる。 幼い竜は常にその周囲を成竜たちに囲まれて生活している。 単独で行動する成竜を相手にするよりも、幼竜を相手にする方がよほど骨が折れるのだ。 なぜそのような明らかに危険過ぎる幼竜を、女二人で探しているのか? それは今ルイズが手にしている一枚の紙切れに原因があった。 多数の火竜が生息する火竜山脈、彼女たちはそこへ鉱石の採集が目的でやってきた。 準備を整えるために立ち寄った麓の町に一泊したときのこと、彼女たちは酒場で気になる言葉を耳にした。 それは「火竜山脈の一角で、親とはぐれた幼竜を見かけた」というものであった。 普段ならそんな与太話、酔っぱらいの戯言と聞き流すところだったが、それが火竜山脈近郊で幼竜となると話は別だ。 ヘルミーナとルイズはそれを喋っていた傭兵風の男に近づいて、酒を奢り、しなだれかかり、女の武器を使って詳しい話を聞き出した。 商隊の護衛だという男は、昨日まで火竜山脈の一部を通る護衛の仕事についていたらしい。 多数の火竜が生息する火竜山脈は、ハルケギニアでもトップクラスに危険な一帯であることは間違いないが、山脈のどこへ行っても竜と遭遇するというわけでもない。 竜たちの生活圏の外ならば、その危険度は大幅にダウンする。 無論、群からはぐれた竜が出現する可能性も完全には否定できない、 そういうわけで、彼は竜のテリトリーの外を横断する商隊の護衛任務を引き受けていたらしい。 危険は大きいがその分報酬も大きい、運悪くドラゴンに遭遇しなければしばらく遊んで暮らせる。 そんなことを心の支えにしながら、怯えつつもきちんと護衛の仕事を果たしていた彼は、もうすぐ山脈が終わろうかというところでそれと遭遇したらしい。 まだ翼で飛ぶこともできないよう、幼い竜の子供。 幼竜の周囲に親竜たちがいる。 子育てに神経質になっている成竜たちは非常に好戦的である。 危険きわまりない幼竜と遭遇してしまった彼は、正直なところ死を覚悟した。 けれど、不思議なことに幼竜の周辺には他の竜の姿はなく、商隊が竜を刺激しないように息を殺して歩を進める間も、結局何も現れなかった。 そうして、商隊と男は無事に街へと到着したというのが話の顛末であった。 しきりにルイズのお尻を触ろうとする男をあしらいながら聞き出したのは、なかなかに貴重な情報であった。 最後に男に地図を見せて場所を確認してから、彼女たちは酒場をあとにした。 そして今ルイズが手にしている紙切れこそ、男が幼竜と遭遇したという場所が記された地図であった。 「まだこの辺に居てくれると嬉しいわね」 「ハルケギニアの竜の生態は分からないけれど、目撃されてからまだ三日。この周辺に居ると考えるのが妥当でしょうね」 その『周辺』とやらがどの程度の範囲なのか分からないから困るのだとルイズは嘆息した。 冬とはいえ、火竜山脈は暑い。 山頂付近の蒸し風呂じみた暑さではないにしろ、二人が今いる場所も十分に暖かかった。 加えて、街から山の入り口までは空飛ぶ箒で飛んできたものの、そこからは徒歩。 火竜の幼体がその場所を離れてしまう可能性を考えて、二人は割と強行軍でここまで上ってきている。 ヘルミーナもルイズも、弱音は吐かないものの、美しい顔を流れる汗は正直であった。 「……少し探して駄目なら、一度休憩にしない?」 「……賛成ね。ドラゴンも、もっとじめじめして空気が淀んでる地下に住めばいいのに」 そろそろ付き合いも長くなってきたこの師匠の変な趣味には口出しせず、ルイズはあたりを見渡して休憩ができそうな場所を探した。 ルイズの視界の端を、ちらりと動く何かの影が横切った。 「! ヘルミーナ! あそこ!」 胸元を手で扇いでいるヘルミーナを余所にルイズが指さしたその先、小高く積み上げられた岩の上、そこには赤い獣の姿があった。 大きさは牛ほどもあるだろうか。赤い鱗に覆われ、背中には折りたたまれた翼がある。 間違いない。ハルケギニア原産の火竜種の幼体であった。 ルイズが気づくと同時、幼竜もルイズたちを確認したのか、威嚇の唸りをあげた。 発見したのはルイズ、だが先に反応したのはヘルミーナ。 「ブリッツスタッフ!」 ヘルミーナが手にした杖の先端を幼竜へと向けると、そこから一直線に強烈な冷気が迸った。 同時、幼竜の喉の奥がオレンジに輝き、恐怖と共に語られる火竜の象徴、ファイアブレスが放たれた。 幼くともドラゴンはドラゴン、そのブレスはヘルミーナのブリッツスタッフの冷気を相殺せしめる程の威力があった。 しかも、その余波は二人の肌を軽い熱波をもって炙っていった。 相殺どころか、押し負けている。 熱気と冷気がぶつかり合い、その余波で発生した水蒸気、それによってルイズたちの周囲はまるで霧にでも包まれたかのようになっていた。 「ヘルミーナ! 杖!」 そう言ってルイズは手持ちのブリッツスタッフをヘルミーナに放り投げた。 ブリッツスタッフはその性質上、使えば使うほどに充填された魔力を消費していくマジックアイテムである。 つまり、追撃には初撃以上の攻撃力は望めない。 その最初の一撃がブレスを押し返せないと分かった以上、彼女たちが考えていたブリッツスタッフを使って、遠くから力任せに押し切るという作戦は使えなくなったのである。 真っ白の視界の中、ドラゴンがいた方向へと一直線に駆けるルイズ。 懐から小さな杖とピルケースを取り出し、器用に片手でケースの中身を口に運ぶ。 口に含んだ錠剤を奥歯で噛み砕き嚥下して、次に呪文を唱え始める。 薬の助けを借り、意識と肉体とを切り離す。意識は呪文に集中し、体はただ最初に決めた通りに前へ向かって走るだけ。 そうして彼女は走りながら、見事呪文を完成させた。 霧が薄れ、再び視界が戻ったとき、幼い竜の目にはナイフを片手に持った女が自分へ向かって走ってきているのが映っていた。 このとき、幼い竜は飢えていた。数日前に親竜とはぐれて以来、常に空腹だった。 しばらく前に餌になりそうなものを見かけたが、それは数が多く体が大きく、諦めざる得なかった。 今回見つけた餌はそのときのものと同じ形をしていたが、先のやつよりも小さく、何より柔らかくて美味そうだった。 目の前の餌を食べる。捕食者の頭は、その原始的な欲求を満たすことでいっぱいになっていた。 幼竜の顎が開く。今ぞ高熱のブレスが吐き出されるという段となっても、駆けるルイズに怯みは感じられない。 だが、ドラゴンにしても躊躇いはない。 真っ直ぐに岩場を上ってくるルイズに向かって、灼熱のファイアブレスが浴びせかけられた。 これで終わり、一巻の終わり。 人の身でドラゴンのブレスの直撃を受けて、無事で済む道理などありはしない。 だが、次の瞬間獲物を確認しようとのそりと動いた幼竜を襲ったのは、腕に走る焼け付きような鋭い痛みだった。 「ギッ!」 突然襲った未知の感覚。それは不快で、ひどく幼竜を苛立たせるものだった。 「ギャギャッ!」 体中を使って痛みと怒りを露わにする。 そうしてじたばたと手足を振り回す幼竜から、素早く飛び退いた影一つ。 五体満足で、火傷一つ負っていないルイズの姿。 その手には赤い血を滴らせた、一振りのナイフ。 しくじった。 折角のイリュージョンの魔法が成功したというのに、肝心のナイフは幼竜の腕に傷を負わせることしかできなかった。 正面に投影した幻を囮に使い、自身は側面から奇襲を仕掛ける。そして首尾良く接近したならば必殺の一撃でもって絶命させる。 これがルイズの計画であったのだが、詰めが甘かったとしか言いようがない。 幼竜は未だ健在であるし、そのどう猛さは手負いになったことで、ますます手がつられなくなってしまった。 本来ならこれは一時退却して体勢を立て直すのが定石。だが、それを決行するにはルイズはブレスの射程範囲内部に、深く入り込み過ぎてしまっていた。 引けば丸焼き良くて生焼け、ならば攻めるか? これもまた上手い方法とは考えにくい。 今のルイズの位置は引くには近過ぎるが、攻めるには遠過ぎる。 ならばどちらがマシか? 頭がその回答を導き出す前に、ルイズの体は前へと飛び出した。 弾丸のような俊敏さをもって飛び出したルイズを見て、竜は大きく口を開けた。 喉の奥では既に赤い焔が灯されている、あとはその塊を怒りに任せて吐き出すだけ。 あるいは、幼竜が冷静であったならば、また違った行動に出ていたかもしれない。 自分に躊躇いなく近寄ってくることや、これだけ火を吐いても未だ食事にありつけないでいることで、危険を察知して逃げ出していたかもしれない。 だからそれはある意味では不幸中の幸い、ルイズの功績だったかもしれない。 とにかく、竜は怒っていた。 怒っていたのである。 幼竜の口から、炎の吐息が放たれた。 正面から飛び込んでいったルイズの目の前が、美しいオレンジの光で埋め尽くされる。 それはとても綺麗で、あの夜に、石塀の上から見下ろした闇によく似ていた。 ルイズの耳元で、誰かが囁いた。 ただのルイズになって以来、何度も耳にした甘い誘惑。 (これでサイトのところに行けるのよ) サイト、その名前を思い浮かべただけでルイズの心がキリキリと痛みを感じた。 自分を残してどこかへ行ってしまったあの少年、誰かが書いた悪魔のシナリオの向こう側に消えてしまった大好きだった彼。 そのサイトに逢える、また逢える。 それを思うだけでルイズの体は力を失ってへたり込みそうになってしまう。 「ブリッツスタッフ!」 彼女を幻想から連れ戻したのは相棒の鋭い叫び声だった。 目前に迫った赤い瀑布に、白色の寒波が叩きつけられる。 瞬く間に周囲はもうもうと水蒸気が立ちこめ、視界を奪った。 いつの間にか幼竜とルイズの延長上へとその位置を移動させていたヘルミーナが、ブリッツスタッフに込められた冷気の魔力を解放し、ルイズの背中越しにそれを放ったのだった。 甘美なる誘惑に屈しかけた精神が、強引に現実へと引き戻される。 意識が飛びかけていたそのときも、ルイズの両足はきちんと目標地点へ向けて動いてくれていた。 ルイズが気がついたとき、そこは既に竜の眼前。手を伸ばせば触れられる距離だった。 驚いた幼竜が再びその口を開けてブレスを吐きかけようとする。 だが、四度目のブレスが放たれるより早く、ルイズの手中にある白銀がきらめき、鱗ごとその喉元を真横に切り裂いていた。 ファイアドラゴンの幼子が横たわっている。 その喉元からは赤い血が噴水のように勢いよく噴き出して、周囲を赤く染めていた。 「お見事な手並みだわ」 返り血を浴びるルイズの背後から手を叩く音がする。 ルイズが振り返るとヘルミーナが小さく拍手しながら岩山を上ってきているところだった。 「うつろふ腕輪はあなたに渡しておいて正解だったわね」 非力なルイズが、幼いとはいえ竜の鱗の防御を貫けた要因、ルイズの右手にはめられた腕輪を見ながらヘルミーナが言った。 うつろふ腕輪、人間の力を引き出すことができる腕輪。 しかもルイズが手につているそれはヘルミーナの特別製。武器を使った直接攻撃でなら、ドラゴンの鱗も切り裂けるかもしれないと、以前彼女が笑って話していたものだったのだが、本当に切り裂けたのは驚きであった。 「さて、仕上げね」 幼竜相手とはいえ、竜殺しを成し遂げたという感慨もなく、無表情のままのルイズが倒れた獲物に向き直った。 喉と口から血を溢れさせる幼竜、その口からはヒューヒューと風が抜けるような音が漏れている。 そのどう猛さとはアンバランスなつぶらな瞳が涙に濡れて、鮮血にまみれたルイズを見上げていた。 ルイズはそんな竜の姿を見ても眉一つ動かさずにその場に片膝をつく。 ついた左の膝を竜の下顎に、そして右足の裏を上あごへと当てて、足に力を込めてその口をこじ開けた。 そして、血の海になった口内に目的のものを見つけるとルイズはそれを素早くつかみ、根本からナイフを使って刈り取った。 直後激しく痙攣する幼竜から、ルイズは転がるようにして距離を離すと、ゆっくりと立ち上がった。 その左手には。血まみれの竜の舌。 「終わったわ」 「そう、それじゃ時間も早いし戻りましょうか」 二人は特にそれ以上この件に関して話をすることもなく、先ほど上ってきた山道を下山し始めたのだった。 そのあとには、哀れな竜の骸が一つ。 前ページ次ページヘルミーナとルイズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/757.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (6)ハルケギニアの意志ある武具デルフリンガー 夜、トリステイン魔法学院、宝物庫前。 ……… 「ねぇ?ミスタ・コルベール『破壊の杖』をご存知?」 「ええ、勿論!存じておりますとも、あれは何とも奇妙な形をしておりましたなぁ」 「流石はミスタ・コルベール、他にはどのような、」 「いやいや、『破壊の杖』は勿論素晴らしい宝物です。しかしですな、これはまだ未発表なのですが、先日から私が研究している『禁断の剣』、あれが『破壊の杖』をも凌ぐ武器だと分かったのです!」 「へ、へぇ…そうなのですか、それは一体どのような」 「今日はもう遅いですし、明日、昼食の時にでもお話しましょう。ご予定などはありますかな?」 「い、いえ、ありませんが…」 「それは結構!ささ、今夜はもう遅いですから、送っていきましょう!」 「いえ、すぐそこですから…」 「最近は怪盗が出るそうですぞ!遠慮なさらず!」 「いえ、ですから……」 こうしてコルベールは見事ロングビルとの昼食の約束を取り付けたのであった。 虚無の曜日。 「街へ行くわよっ!」 自室で、ルイズがウルザに向かって宣言する。 「………急だが、何か入り用なのかね。」 応えるウルザは机に向かって何かを製作中である。 どうやら先日から作っていたものを、今はコルベールと共同製作という形で進めているらしい。 「武器よ、貴方用の武器を買うわ」 「武器……私はメイジなのだが、なぜそのような物を買うのか教えてもらいたいな」 「貴方が魔法を使うととんでもないことになりそうなのと、手加減ってものを知らないからよ!」 先日、この使い魔メイジとギーシュとの決闘は、ギーシュが灰色熊に殴り倒されるという結果で終わった。 その後ギーシュの意識が戻らなかったのだが、モンモランシーの手厚い看護の末、三日後に目を覚ました。 結果としてギーシュとモンモランシーの絆が深まったのは雨降って地固まったということなのであろうが、今の問題とは関係が無い。 問題は、ウルザというこの男がドットメイジ相手に大人気ないくらいにこてんぱんにしたということである。 決闘の夜、ルイズがウルザを問い詰めたところによれば、彼は本来「アーティファクト」と呼ばれる魔法と機械の融合したようなものの扱いを得意としており、それに比べれば魔法などは手習い程度であるらしい。 そして、魔法を使った手加減が苦手というのも本当のようだ。 彼なりに手加減のつもりで、召喚したらしい熊は、本能のままギーシュを殴り飛ばしたというわけだ。 勿論、彼が手加減するつもりでも熊は手加減なんてしないだろう。 (そもそも!使い魔なのに召喚魔法って何様よっ!) 「だから!貴方には剣を持ってもらうわ!」 「だから、なぜそう繋がるかを説明してもらえないかね?ミス・ルイズ」 「魔法が手加減出来なくても、剣なら出来るでしょう!ただの力加減なんだから!それに貴方に魔法を使わせるよりは貴方に武器を持たせる方がずっと安全だわっ!」 「……そういうことなら仕方あるまい、では支度を済ませるので暫し待ちたまえ」 「タバサッ!タバサってば!お願い!助けて頂戴!」 「………」 「出かけるわよ!早く支度をしてっ!」 「…何?」 「おじさまがルイズに連れられて街へ行っちゃったの!今日こそはデートに誘おうと思ってたのに!だから追いかけるのよっ、おじさまをルイズ一人に独占させたりはしないわっ!それには貴女の協力が必要なのよタバサっ!」 「………分かった」 「ありがとう!タバサ!おじさま!待っててください、キュルケは今お側に参りますわっ!」 「ほう、これがトリステインの城下町かね…」 「ええ、ブルドンネ街はトリステインで一番大きな通りよ」 「中々ににぎわっている様だね」 「スリも多いですから、気をつけて頂戴ミスタ・ウルザ」 「目当ての店は分かっているのかね?ミス・ルイズ」 「…ええ、こっちよ」 「へーい、いらっしゃーい」 二人が入ったのは裏通りにある武器屋であった。 「へ、はい!貴族様!うちは全うな店屋で、お上に目をつけられるようなことは…」 「今日は客として来たのよ、彼に持たせる剣を見繕って頂戴」 「では、こちらなど如何でしょう?美しい彩飾が施されたレイピアにございやす」 「あら、キレイな剣ね。でも随分と細い剣なのね、折れちゃいそうだわ」 「へへぇ、それは最近貴族様に人気の剣でございます」 「貴族に人気?どういうこと?」 「昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たせるのが流行っておりましてね。 その際にお選びになるのがこのように綺麗な剣でさあ お客様方もそれで剣を買いにいらっしゃったんじゃ無いんですかい?」 「違うけど……なんでそんなことが流行ってるのよ?」 「へい、何でも城下町を盗賊が荒らしておりやして…」 「………ふーん」 ここで後ろに控えていたウルザが口を挟んだ。 「いや、駄目だな。この剣は耐久性に問題がある。それに精製工程や組成にもだ。 装飾にも粗が目立つ、これでは武器としても飾りとしても二流と言わざるを得ない」 ぽかーんと口をあける二人。 「あんた、妙なところに拘るのね…」 「お、お客さん!それは無いですぜ!それはうちの取っておきでさぁ!」 「駄目なものは、駄目だ」 「そうね、本人がそう言っているんだから、別なのを用意して頂戴。大きくて太いやつよ」 「どーぞ、これが店一番の業物でさぁ」 「へえ、これは確かにご立派ね」 「こいつを鍛えたのはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で、魔法がかかっているから手伝って一刀両断でさぁ」 「ふむ、確かにエンチャントはかかっているな………剣としての完成度も先ほどよりは良いようだが………」 「ッネクラメイジが、ちょっと目利きが効くからってイッパシの口きくんじゃねぇ。 剣も振ったこと無いようなメイジが、武器にいちゃもんつけるなんざ、ふざけんじゃねぇよ!」 「おいこら!デル公!お客様になんて口ききやがる!静かにしやがれ!いつもいつも商売の邪魔しやがって!」 「へっ!てめぇの売り方にはヘドが出るぜっ!」 店主が声をかけたのも特価ワゴンセールであれば、返した声もワゴンセールからであった。 「ほう、これはインテリジェンスソードか」 「ちょっ!インテリジェンスソードって意志を持つ魔剣じゃない!なんでそんなものがこんな場末の武器屋のワゴンセールに入ってるのよ!」 「ミス・ルイズ、この剣にしよう」 「ええ!そんな簡単に決めちゃっていいの!?」 「多少の経年劣化は見られるが、この程度ならば武器としての機能に問題は無いだろう」 「そう言うなら……これ、頂くわ」 ウルザがワゴンセールからデルフリンガーを引き抜いた。 「……おでれーた、てめ、メイジの癖に「使い手」か!?」 「ほう、分かるとは、実に興味深い」 ウルザが色眼鏡越しにじろじろとデルフリンガーを観察する。 「おめぇ………まあ、いいか、よろしくな、相棒!!」 おでれーた、おでれーた、相棒はおっかねぇなあ ―――デルフリンガー 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/mitlocke/pages/721.html
ルイズ ランク:D G(ゼロの使い魔) 属性 ・女 ・虚無の担い手 ・魔法使い ・人間 敗北条件 固有の敗北条件なし 能力値 ESP能力レベル 4 ESPパワー 25 耐久力 5 精神力 6 特殊能力 ・エクスプロージョン[戦闘][主要][攻撃][E] D弾を1枚利用することで、[LV:4 火力:20]で対象1体に攻撃を行う。 ESPパワーを10消費する。 ・ディスペル[戦闘][特殊] 自分以外の対象が攻撃を行った時、自分のESPパワーを任意の値だけ消費することで、 対象の攻撃の火力を消費したESPパワーの2倍分だけ減少させる。 ・イリュージョン[戦闘][主要] 精神力チェックを行う。成功した場合、以下の効果を得る。 この能力は1戦闘に1回のみ使用できる。 *自分が攻撃対象に選択された時、1D6を振る。 3以下が出た場合、その攻撃を回避する。 この効果は1戦闘に1回のみ使用できる。 ・サモン・サーヴァント[戦闘][先制] ESPパワーを3消費することで、精神力チェックを行う。 成功した場合、その戦闘中[手下:2]を1人得る。 この能力により同時に複数の手下を得ることはできない。 この手下は同調を行った場合、その同調後に失われる。 ・コントラクト・サーヴァント[戦闘][支援] サモン・サーヴァントにより得た手下が同調しても失われなくなる。 ESPパワーを5消費する。 解説・動き方 Dランクだけど4ー25-5-6と高めの能力値を持つ能力値重視キャラクター。 攻撃能力は微妙だが、ディスペルが非常に優秀。 攻撃対象が自分以外の場合でも使用でき、消費するESPパワーも好きな量を選択できるのでかなり便利。 ESPパワーの管理には特に気をつけよう。 高LVのCカードを使うよりはディスペルにESPパワーを回した方が良い場合もある。 (6以下1回は41.67%、6以下2回は17.36%、6以下3回は7.23%) ルイズ側から見るとパワー消費がきつい印象を受けるが、敵からすると結構うざい能力である。 サモン・サーヴァントは精神力チェックに失敗すると 貴重なESPパワーを消費しただけになってしまうので少し考えてから使おう。 動き方としては普通の(G)キャラクターと同じように動くと良いだろう。 優秀なキャラクターではあるが、攻撃能力に乏しいので戦闘では逃げを常に選択肢の一つとして考え、 ディスペル等で仲間のサポートに努める方が強い。 Q&A Q.格闘攻撃に対してディスペルは使用できますか? A.はい、使用できます。 その場合、攻撃者に行われる損害判定は攻撃者が宣言した値で判定し、 攻撃対象に行われる損害判定はディスペルで火力が減少した後の値で判定します。 このキャラクターへの意見 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9118.html
魔法少女おりこ☆マギカ 外編 より 美国織莉子を召喚 ゼロのルイズとオラクルレイ 01 ゼロのルイズとオラクルレイ 02 ゼロのルイズとオラクルレイ 03
https://w.atwiki.jp/touhoulal/pages/210.html
(るいず) 「やっぱり、ここから入ってこようとしてたわね!」 LV HP 力 速 体 知 種族 サイズ EXP ドロップアイテム 13 572 12 32 33 51 1x2 ソウルジェム 属性耐性 状態異常耐性 フィールド耐性 特記事項 善、悪に強い 眠り なし 逃亡不可 ※Ver1.05時点のステータス。 使用技 ブルーファイア 単体対象の有射程攻撃。 ??? (???) 「出番よ実験体! 侵入者をかわいがってあげなさい!」 LV HP 力 速 体 知 種族 サイズ EXP ドロップアイテム 12 416 44 35 45 32 2x4 ソウルジェム 属性耐性 状態異常耐性 フィールド耐性 特記事項 善、悪に強い 眠り なし 逃亡不可 ※Ver1.05時点のステータス。 使用技 ライトブレード 単体対象の近接攻撃。多段ヒット技。 レフトブレード 単体対象の遠距離攻撃。 攻略 戦闘開始直後に現れる三体の???が戦闘フィールドの大部分を塞いでしまうため、 ルイズにまともに攻撃するためには先にコイツらを倒す必要がある。 ???の攻撃で危険なのはライトブレード。 多段ヒット技なので多少運が絡むとは言え、全段ヒットすると結構痛い。 そのため距離を離して戦うのが基本だが、レフトブレードの射程がそれなりに広く、思わぬ所から攻撃される事もあるので注意。 分散して攻撃するよりも一体ずつ集中的に攻撃して早めに倒すと良い。 ???を全て倒すとルイズがブルーファイアを連発してくるが、攻撃力はそれほど高くはないので、 ???さえ倒してしまえば後は大して苦労しないだろう。 キャラクター概要 東方旧作の「東方怪綺談」の2面ボスとして登場した魔界人。 魔界から人間界へ向けて旅行しようとしていたが、 魔界と人間界の境界で運悪く靈夢たち主人公勢に出会ってしまった。 ???の元ネタはナンバー128。 ファイナルファンタジーVIに登場するボスモンスターである。 原作には正面を向いたグラフィックしか存在しないため、 側面や背面のグラフィックはドッターの手打ちによるオリジナルらしい。 本作では、霊烏路 空の能力を用いた核兵器製造プラントを止めるため、 地上部隊を囮として地下から侵入してきた魅魔達に襲い掛かった。 尚、明羅はこの時に???を見て「実験体!?まさか!」と驚いており、 明羅が実験体について何か知っている事が仄めかされている。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/302.html
朝、目が覚めたキュルケは着替えを終えると鏡の前に座り、化粧を始める 今日は虚無の日、休日である 確実に誘惑するにはどんなメイクをしようかと、考えながら鼻唄をする 化粧を終え、自分の部屋を出て、ルイズの部屋のドアを開けたが空っぽであった 「相変わらず色気の無い部屋ね。それにしてもダーリンは何処へ行ったの?」 すると外からヒヒーンっという声が聞こえてきた 窓から覗くと二頭の馬とそれを引っ張る二人、ロムとルイズだ 「おっと!頬を舐めるのは止めてくれないか?そうだ、ははっ可愛いな」 「あんた馬に乗った事あるの?」 「いやないな。俺の世界には動物に変形できる者もいるが」 「なんでもありねあんたの世界は・・・・、さあ行くわよ」 二人は馬に股がり走って学院を後にした 「あの二人・・・・、街へ行くのね!こうしちゃいられないわ!」 キュルケはそう言って部屋を後にした。 タバサは虚無の日が好きだ、読書によって自分の世界が形成できる日、彼女にとってはそれ以外は他人と戯れるありふれた世界である この日も自分の回りに音を消す魔法、『サイレント』をかけて何時もの世界と自分を遮断して自分の世界に入り浸る そんな自分を元の世界に引き戻す者が表れる キュルケだった 彼女は自分の部屋の鍵を禁止されているはずの『アンロック』で解除して入ってきた 慌てた様子で彼女は大袈裟に声を出すモーションをとっている 本来なら自分の読書を邪魔する者は『ウインド・ブレイク』で吹き飛ばすのだが、相手は数少ない友人のキュルケである しかたなく、タバサは本を閉じて魔法を解除した 「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度して頂戴!」 「虚無の曜日」 「わかっている、貴方にとって虚無の曜日がどんな日だか痛い程知っている でも今はそんなけと言ってられないの。恋なのよ恋!」 会話からどれだけこの二人が対照的なのかがよくわかる キュルケは感情で動き、タバサは理屈で動く それぞれを例えるなら火と水のようなものだが何故か仲がよかった 「そうね。あなたは説明しないと動かないよね。 あたしね、恋をしているのよ!あの人に!でもあの人はにっくいヴァリエールと出掛けたの!あたしはそれを追いかけたいのよ!」 それを聞いたタバサはやっとで動きだした 「ありがとう!じゃあ動いてくれるのね!」 少し涙目のキュルケにタバサは頷いた、そして窓を開けて口笛を吹きシルフィードを呼んだ 実の所タバサがキュルケの願いを受け入れたのは2つの理由がある 1つはキュルケが親友であること いつも一緒にいる友人のだから共に助け合うのが筋なのだろうか もう1つは彼女の追跡対象があのルイズの使い魔であることである ギーシュとの決闘で彼はとんでもない物を見せてくれた 平民でありながら風の塔の上に立ち、名乗り、飛び降りる そしてゴーレムを自らの拳と脚で砕く、魔法を使わずしてそんな平民見た事がない あの時タバサは本で読むようなリアリティを生で感じる事によって彼に興味を持ったのだ 今日も何か面白い物を見せてくれるかもしれない 理由はそれで十分であった 二人を背に乗せてドラゴンはばっさばっさと力強く羽ばたき、宙を浮いた 「いつ見てもあなたのシルフィードには惚れ惚れするわ」 キュルケが赤い髪を靡かせ感嘆の声をあげる 「どっち?」 タバサが尋ねる 「わかんない・・・・慌ててたから」 そしてタバサが命じる 「馬二頭、食べちゃだめ」 シルフィードは小さく鳴いて、蒼い鱗を輝かせ、空を泳ぐように翔んだ 一方学院の宝物庫の前に一人の女性、ミス・ロングビルが立っていた 鉄でできた巨大な扉を見上げ手を当て、慎重に辺りを見回した後ポケットから杖を取り出すと呪文を呟きそれを振る しかしバチッと電撃の様なものが走る 「どうやらアンロックは効かないようね・・・・この調子だと『錬金』も効かないようですし、さて、どうしましょ」 扉を見つめていると足音が聞こえてきた 一週間前より激務で禿げてしまったコルベールであった 「おやミス・ロングビルこんな所でなにを」 「あらミスタ・コルベール、実は・・・・宝物庫の目録を作っておりまして」 いや、それは大変ですなぁと禿げがテカるコルベールが笑う そしてロングビルは少しくだけた感じで話し、尋ねた 「ねえ、ミスタ・コルベール」 「はっはい、なんでしょうか」 ハゲコルベールが少し惑った感じで聞く 「宝物庫の中に入った事はありまして?」 「ありますとも」 「では、・・・・をご存知で」 「いやぁ、それが見た事があると言えばあるのですが何やら他のガラクタ、もとい宝と比べると厳重に保管されてましてな」 「それで・・・・?」 「恐ろしくてちゃんと見た事がないのですよ」 ロングビルはふむ・・・・と呟く 「わかりました、とても参考になりました。ではまた昼食の時間に」 「あ、はいそれでは」 (やはり強攻突破しかないようね、タイミングは今夜。ウフフ、一体どんなお宝なのかしら?) (それにしても綺麗だった、昼食も楽しみですな) それにしてもこの禿げのオッサン、迂濶である 所変わってそこはトリステインの城下町 ロムはルイズと人が賑わう道を歩いていた 貴族らしい格好が見当たらないので殆んどが平民の様である 老若男女が歩き、走り、喋り、それぞれ店を持ち、果物や肉や、篭を売る人たちで賑わう 「売っている物は違えどどの世界でも街は賑わうものなのだな」 「そんなの当たり前でしょ、じゃあ早速武器屋に行くわよ」 どんどん進んでいくと回りに看板が増えていく ×印の看板だったり薬瓶の看板だったり様々だ 「商売人は立派ね、あんな物まで売るなんて あっあれよ!」 ルイズが目の前の剣の形の看板を下げた店に指をさす 「あ~あ暇だねぇ、こんなに天気がいい日に金貨をドーンと置いて行く気前のいい客は」 「客よ、ちょっといいかしら」 (本当に来やがった!)「い、いらっしゃいまし貴族様!この店になんの様で・・・・」 「剣を買いに来たに決まっているじゃない。あいつに合った剣を探してほしいんだけど」 ロムは店の中にある剣を真剣な目付きで眺めている そんな様子を見て店主はニヤリと笑う 「お連れの騎士様は?」 「剣が欲しくて欲しくて堪らないから私が買ってあげる事にしたのよ」 「これは何という慈悲深い貴族様!いや~そんな貴女にはきっと民衆は尊敬するでしょう!」 ルイズが少しにやける、満更でもないようだ (こりゃ、鴨がネギしょってやってきたわい。せいぜい高く売り付けようか) 「店長!少し聞きたい事がある!」 突然のロムの大声に驚く主人 「な、なんでしょうか」 少しおどけた感じで聞く 「この店には狼の印が入った剣はあるか」 「狼の印ですかい?いや~そんな物はないですねい」 「そうか・・・・、すまん邪魔したな」 ロムは店から出ようとするがルイズに引き留められる 「ちょっと!折角人が買ってあげるって言っているのにそれは無いでしょ!」 「しかし目的の物がなければ仕方ない・・・・」 「か・い・な・さ・い!嫌ならまたドカンよ!」 ロムはギクッとした顔を見せた後 「見ていこう」 あっさり落ちた 「も~ダーリンったら何処へ行ったの!?」 後を追って街に着いたキュルケとタバサ 「このままじゃルイズに先を越されるじゃないの~」 っとキュルケが喚いているとタバサが顔の前に杖を出す 「・・・・あれ」 「あれ・・・・ってダーリンとルイズ!?」 武器屋からルイズとロムが出てきた、ロムは腰に鞘を付けて手に持った剣を眺めていた 「ゼロのルイズったら~!私にダーリンとられたくないからってプレゼントで気を引くつもりね! こうしちゃいられないわ!タバサ、ここでちょっと待っててね!!」 キュルケは武器屋に向かって走っていき、タバサふう、と息を吐いて再び本を読み始めた 「あんた本当にそんなボロい剣でよかったの?」 ロムに向かって少し呆れたような声を出すルイズ、すると 「ボロいボロいうるせえな娘っ子!こちとら伊達に長生きしてねぇんだぞ!」 なんとロムの持つ錆びた剣から声が出てきたではないか 「なんですってー!このボロ剣!」 「二人とも落ち着け、とにかくこれから宜しく頼むなデルフリンガー」 「おうよ相棒!へへっやっぱり強い奴が主人だと気分がいいな!」 この喋るボロ剣、デルフリンガーのこと魔剣インテリジェンスソードを買ったのはこのような経緯があった 店の主人はルイズが貴族である事を良い事に大剣を市場相場では有り得ない値段で売りさばこうとしていた。 それでルイズが主人に交渉している時、突然声が聞こえた 「おい、そんなん買わねえ方がいいぞ。そこの親父はがめついからてめえらからぼったくるつもりなんだよ」 ルイズとロムは思わず声の出所に振り向いたが、誰もいなかったので不思議に思っていると主人が突然怒鳴った 「やい!デル公!お客様に失礼な事を言うんじゃねぇ! 貴族に頼んでドロドロに溶かしてやるぞ!」 「やってみやがれ!どうせこの世にゃ飽きた所だ!」 「それってインテリジェンスソード?」 ルイズが当惑しながら尋ねる 「そうでさ若奥様。意思を持つ魔剣インテリジェンスソードでさ。 でも口が悪くて悪くてこいつのせいで何人も客が逃げたことか・・・・」 主人が愚痴を溢していると 「面白そうだな」 っとロムが興味を持ち、喋る剣を手に取った 「おいこらに俺にさわんじゃねぇ・・・・てあれ?」 さっきまでの大声が急に小さくなった 「おでれーた。てめー『使い手』か」 「『使い手』だと?」 「それにかなりの修羅場を越えてやがるな・・・・」 「それはあっている」 「面白ぇ、てめ、俺を買え」 「・・・・わかった、買う、マスターこいつで頼む」 するとルイズが嫌そうな顔になる 「え~~そんなのにするの?もっと綺麗でしゃべらないのにしなさいよ」 「しゃべる剣なんて面白いじゃないか。俺の世界には人を操る剣はあったがしゃべる剣は無かったぞ」 今さらりとトンでもない事を言った気がしたが・・・・取り敢えず他に録な剣が無いので買うことにした 「あれ、おいくら?」 「百で結構ですわ、あとこれはあいつの鞘、これを付けていれば黙りますぜ」 「じゃあはい、これで」 「毎度」 こうしてルイズとロムは店を後にした この後すぐにキュルケが入店し、彼女のお色気攻撃によって主人は店一番の業物を超格安の値段で泣く泣く手放す事になる 「・・・・所でデルフリンガー」 「なんでい相棒」 「お前は狼の印が付いた剣を知っているか?」 「知らねえな」 「そうか・・・・」 おまけ 食堂にて シエスタ「おかしいわね、ロムさん昼頃になっても会えない・・・・。一体どうしたんだろ」 「昨日は酷い目にあったよ・・・・まさか彼女に燃やされるなんて」 「ああまさかキュルケがあの平民と付き合っているなんて」 シエスタ(ピクッ) 「あの平民許さないよ、きっと彼女はアイツに誘惑されたんだ」 シエスタ(ピクッピクッ) 「でも彼女は強い人が好きだなんて言っていたからな・・・・」 「いるわけがいないよなぁ、風の塔から飛び降りる平民なんて」 シエスタ(!!!!) 「僕も『フリッグの舞踏会』で風の塔から飛び降りたら彼女は振り向いてくれるかなぁ」 「それじゃ足が折れて踊れないだろ」 「問題はそれじゃない、あそこから落ちたら死んじゃうから!」 「ハハハハハハハ」 シエスタ(・・・・・・・・・・・・) 続く?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/333.html
爆発自体については、おとーさんは平気でしたが使い魔たちが混乱して暴れています。 「し――― 静かに、娘が起きてしまいます」 おとーさんの電波な言葉で使い魔達は一応落ち着きました。 おとーさんが辺りを見回すと爆発のせいで木っ端や何かの破片が散乱しています。 咳き込みながら生徒たちは机の下から出てきます。 殆どの生徒は無事のようでしたが、逃げ遅れたのか一人の太った生徒が教室の隅でのびていました。 ルイズの方を見ると服はボロボロで全身煤だらけになっています。 「ちょっと失敗しちゃった」 煤を手で払いながらルイズはそう言いますが、生徒からは非難ごうごうです。 シュルヴルーズは最後の気力を振り絞りルイズに教室の掃除と今日一日魔法の使用を禁ずる事を言い渡して そのまま気絶しました。ルイズは元々魔法が使えないのであまり意味はありませんが。 爆発のせいで今日の授業が中止になったので生徒たちはそれぞれの部屋に帰りました。 教室にはおとーさんとルイズの二人だけが残り、爆発の後片付けをおとーさんがしています。 ルイズは机の上に座ってその様子を見ていました。本来ならばルイズが片付けをしなければならないのですが、 私の使い魔だからとおとーさんに押し付けたのでした。 「・・・・また・・失敗した・・・ 」 おとーさんは掃除の手を止め、呟くルイズを見ました。 「いっつも失敗するの。簡単なコモンマジックも使えないの。魔法成功率ゼロ、だから『ゼロのルイズ』ってみんなバカにするの・・・・」 ルイズの肩が小さく小刻みに震えているのがわかります。 おとーさんは知りませんが小さい頃からルイズは貴族の三女として厳しく育てられてきました。 無論そのこと自体はごく普通なことなのですが、ルイズは魔法が使えないため人一倍厳しく育てられました。 ルイズ自身も人の何倍も努力して魔法が使えるように頑張りました。 それは、トリステイン魔法学院入ってからも続けてきました。ですが、どう頑張っても魔法を使うことが出来ませんでした。 その為、学院の生徒から馬鹿にされ平民からも表立ってではありませんが陰で馬鹿にされていました。 貴族としてその事は恥辱でした。また、使えない自分自身にも嫌悪感をつのらせていました。 「・・・サモン・サーヴァントが成功して・・・ おとーさんを使い魔に出来たから・・・ 魔法が使えると思ったのに・・・ なのに・・・」 ふいにルイズは優しく抱きしめられました。吃驚して顔をあげると抱きしめているのはおとーさんでした。 「ちょ、ちょっと、おとーさん何やって・・・」 ルイズがそう言うと今度は頭を撫で始めました。無言でしたがそれはそれはとても優しく。 そうこうしているとルイズの肩がまた小刻みに震え始めました。 「こここ、子ども扱いしないでよ!!!」 ルイズはそう言うとおとーさんから離れ教室の出口まで駆け出しました 「もう、おとーさんの今日の食事抜き!!」 そう一言残してルイズは教室から出て行きました。 おとーさんはしょんぼりした感じでまた教室の掃除を始めました。 おとーさんの掃除が終わったのは正午を少し過ぎたころでした。 ルイズの部屋に帰ろうとしていましたが、今朝の洗濯物の事を思い出してシエスタの所へ行く事にしました。 洗濯場へ向かっていたおとーさんでしたが、美味しそうな臭いがしてきたのでついついそちらの方へ行ってしまいました。 食堂に着いたおとーさんでしたがルイズから「食事抜き!!」を言われたのを思い出してしまいました。 おとーさんはその場で涎をたらしてぼーっとしていました。 シエスタは食堂の外にいるおとーさんに気がついて近づいてきました。 「使い魔さん。お洗濯物出来上がっているので食事の後で渡しますね~って え? 食事抜きなのですか???」 シエスタは少し考えた後 「ちょっとこっちへ来てください」 と、おとーさんを厨房の方へと連れて行きました。 「余り物で作った賄いのシチューなのですけど、良かったら食べてくださいね」 おとーさんはシチューを頂きました。賄いという事でしたが、朝食べた質素な食事に比べたら遥かに豪華でした。そしてそれはとても美味しいものでした 「美味しかったですか? よかった~。食事抜きの時はいつでも言ってくださいね。 え? 仕事を手伝いたい? じゃぁ、このデザートを配って・・・」 デザートを手にとってシエスタはおとーさんを振り返りました。そこにはメイド服姿のおとーさんが居ました。 「あ、あはは・・・・ 別に服まで着なくてもいいですよ」 シエスタは引きつった笑いでおとーさんにそう言うと、メイド服を脱がせて改めておとーさんに手伝ってもらうことにしました。 (私、なんかとんでもない事お願いしたんじゃ・・・) シエスタはちょっと不安を覚えました・・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8332.html
前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝 第一章~旅立ち~ その7 光の剣?デルフリンガー 『ゼロのルイズの使い魔が、ギーシュを決闘で負かした』 このあまりに刺激的なニュースに学院はどっと沸いた。 メイジを下す実力を持つ子供が現れた。 いや、ギーシュの慢心によるものだ。 様々な噂が錯綜することとなった夜、ムサシは厨房にいた。 「おっさん!完璧だぜ!これこそおにぎりだ!」 「おう!たんと食ってくれ!能なし貴族の鼻っ柱、よくへし折ってくれたな!」 ムサシの髪を大きな手で撫でる料理長マルトーは、非常に上機嫌だった。 おかげで厨房の雰囲気はすっかり宴会場になっている。 彼の好物『オニギリ』を存分に振舞いもてなし、ムサシのお腹は幸せではちきれそうだ。 「もう、マルトーさんったら……でも本当によかった、ムサシくん……」 「どうしてだい?」 「心配していたの、ムサシくんが負けちゃうんじゃないかって」 通常、ハルケギニアで貴族に平民が逆らうことは自殺行為だと思っていた。 シエスタもそんな常識を持って今まで生きていたのだが、目の前の小さな少年がそれをひっくり返したのだ。 「本当に勝っちゃうなんて。ムサシくん、まるで『サムライ』みたい」 「へへッ、おいらがあんなヘナチョコに負けるわけねえさ!……え?『侍』?」 「あ、私の故郷では、とってもすごい剣の使い手をそう呼ぶらしいの」 聞き返したのは、聞きなれぬ言葉だからでは無い。 ムサシは知っている。 刀を振るう戦士、すなわち自分のことをそうとも呼ぶと。 シエスタがこの地に存在しない戦士の呼称を知っている理由を聞こうとしたその刹那。 マルトーが二人の間に顔を突き出した。 「なんともシャレた異名だなシエスタ!」 「ひゃ、マルトーさん、酔ってるんですか!?まだ夕食の後片付けは残って……」 「よーし!シエスタの故郷に従って、ムサシを『我等が侍』と呼ぼうじゃないか!」 『あっぱれ、みごと、我等が侍!』 「うわぁっ!おいおい勘弁してくれよ!」 厨房がコック一同のどんちゃん騒ぎの場と化して、シエスタは苦笑する。 ムサシもまんざらではなさそうで、やんややんやの大騒ぎだ。 そろそろ食堂の方にも厨房の騒ぎが聞きつけられようか、といったその時。 恐怖の大王のように、それは降臨した。 「誰が恐怖の大王よっ!ムサシ!ムサシはいるの!?」 「ルイズ!?」 厨房の喧騒が、水を打ったように静まる。 ムサシはご主人様のところへ嫌々ながら進み出た。 「なんだよ、ここで飯をもらうことは言っておいたゼ?」 「だからってご主人様よりゆっくり夕食を食べてていいわけ無いでしょ!ほら、帰る!」 「うわっ、引っ張るなって……シエスター、おっさーん。ごちそうさま!」 大騒ぎはさらに騒がしいルイズの登場で一気に終焉を迎えた。 シエスタもマルトーも、ぽかんと立ち尽くしてしまう。 「行っちゃいましたね」 「全く落ち着かない主人みたいだな。同情するぜ『我等が侍』」 どこかからかいのように微笑みながら、ムサシに手を振る。 彼の次の来訪を楽しみにする、厨房の一同であった。 * * その後、オールド・オスマンからのお咎めも無く、ルイズは無い胸をほっと撫で下ろした。 ギーシュも後日、ムサシといがみ合うこともなく話しているのを見かけたし、特に遺恨はなさそうである。 ルイズは使い魔の順応力が優れていることに感心するやら呆れるやらであった。 当のムサシはというと、しばし穏やかな日々を過ごし、満足しているようだ。 朝、ルイズよりも早く起きて剣の稽古。 他の生徒たちの使い魔と駆けまわり足腰の鍛錬。 腹が減れば厨房でおにぎりを貰い疲れたら青空の下でごろりと寝る。 ヤクイニックで過ごした日々と、そう変わり映えはしていない。 ただひとつ、不満な点があるが。 「タイクツだ……どっかに強いヤツでもいねえかな~」 ギーシュとの決闘騒ぎ以来、彼に決闘と呼べる出来事は舞い込むことがなかった。 三度の飯より決闘が好きのムサシにとっては、過ぎたる平穏は不謹慎ではあるが遠慮したいところなのだ。 帝国の刺客、ビンチョタイトの異常による怪生物、そしてクレスト・ガーディアン。 以前の場合は未知の強敵に事欠かない、飽くなき戦いが待ち受ける世界。 しかし今は彼を取り巻く状況が、最初から違っている。 彼はルイズの下僕であり、世界を救う英雄では無かったのだ。 下僕の立場で戦うことなどそうそうなく、ムサシは磨いた剣を持て余す日々を送らざるを得ないのだった。 * * そして数日後、虚無の曜日がやって来る。 いつもの時間に起こしたねぼけ眼のルイズの話によると授業が休みらしい。 着替えに入ったご主人様を置いて、寝袋をしまったムサシは寮の外へと繰り出した。 ちらほらと、他の生徒や使い魔の姿も見える。 ムサシは他人の邪魔にならないよう、人気の少ないところで黙々と鍛錬を始めた。 しばしそうしていた所、最近仲良くしている使い魔がのそのそ、と寄ってくるのを感じる。 「きゅいっ」 「やあ、元気そうだな!」 誰のかは定かでは無いが、恐らく使い魔であろう竜が頭を摺り寄せてきた。 一昨日、昼食の特製『マルトーおにぎり』(例によって残り物の高級鶏肉入り)を半分こした仲だ。 今日はまだ朝食も貰っていないが、それでもいいらしくムサシの鍛錬を眺めている。 ちゃっかりしたことに、こうして近くにいればおこぼれを貰えるという算段らしい。 だがムサシのほうも、別にそれは構わないようだ。 ヤクイニックでもここまで身体の大きい生物は目にしたことがなく、ムサシは興味があった。 この竜だけでなく他の愛らしい使い魔を見ると、ジャンや村の人々がレノを可愛がった事も多少は理解できると言うものだ。 「ムサシくん、おはよう」 「おう、おはよう!どうしたんだいシエスタ」 続く来訪者はなにやら包みを抱えたシエスタだ。 決闘をした夜以降、何かと気を使ってくれている。 腹が空いていないか、着ている物は綻びていないかなどだ。 故郷の弟を思う気持ちや感謝の念がそうさせているようだったが、その度ルイズは面白くないらしい。 シエスタも気を遣ってか、ムサシが一人で居るときに話しかけてくれるようになった。 貴族相手の口調をしなくてもいいせいか、シエスタ本人にもそれは安らぎになっているようである。 この地に珍しい黒髪の二人は、仲睦まじく会話をしていた。 「マルトーさんが持たせてくれたの、朝ごはんに食べてね」 「わざわざ届けてくれたのか?何から何までありがとな」 「ううん、気にしないでいいの。それに私ムサシくんと話していると、なんだかホッとするっていうか……」 「きゅいっ、きゅい!」 「きゃッ!?」 シエスタの包みの匂いに我慢ができなくなったか、青い竜が大きな頭を摺り寄せてきた。 少し驚いたシエスタだが、よしよしと頭を撫でてなだめてやると竜は嬉しそうに鳴き返す。 「わりい、こいつもマルトーさんの飯が好きみたいなんだ」 「うふふ、食いしん坊なのね。ムサシくんと仲良くね」 「ありがとうシエスタ、じゃあな!仕事がんばってくれ」 「ムサシくんもね!」 学生が休みとしても、使用人の彼女にとって休日では無い。 仕事にもどったシエスタにムサシは手を振り、今日も美味しそうな食事を竜と仲良くいただいた。 「うん、初めに食ったパンよりもずっとうめえ。ジャムの店を思いだすな」 「きゅいぃ~っ」 魚のオイル漬けを野菜と一緒に挟んだサンドイッチは、パン嫌いなムサシをも唸らせた。 最初こそ苦手としていたパンだが、ヤクイニックでの常食のひとつとしての習慣が徐々に味覚を変えたらしい。 今ではおにぎりほどではないにせよ、パンも悪くない。 隣で美味しそうに頬張る竜を見ていると、よりそう思える。 「ふうー、食った食った!さて、今日は遠出しようかな…?」 「きゅいっ?」 実はムサシ、一昨日、昨日と学院の塀を乗り越え脱走している。 この塀際で眠っていた竜の身体を足場にし、ゲイシャベルトの力を発揮したのだ。 自分なりに元の世界への回帰を図るという意味もあったのだが、何よりじっとしていられなかった。 彼にこの学院は、少々狭いのかもしれない。 それに、彼は昨日見つけたのだ。 (また"あんなもん"が見つからないとも限らないしな) 深い森の中に、手がかりを。 「悪いけど、また今回も頼むゼ」 「きゅいきゅいっ」 「何を頼むのよ」 ぎょっとしたムサシが振り向くと、身繕いも綺麗に整えたルイズが立っていた。 ムサシが腕の時計を見ると、もう学生達の朝食の時間は終わっている。 黙って外出しようとしたことが後ろめたいこともあり、後ずさりして身構えた。 対するルイズは疑問を抱きながらも、珍しくムサシを見て微笑を浮かべている。 「さ、準備して」 「え?」 「剣を買いに行くわよ」 「変なところ触らないでよね」 「そんなこと言ったって、他につかまる所もねえぜ」 「誰の身体につかまるとこが無いって!?」 頭頂に肘を決めながらルイズが言う。 ムサシの身体に合う馬など流石に無く、二人で一頭の馬を使わざるを得なかった。 やいのやいの言いながらの珍道中は2,3時間続き、ようやく目的地の街にたどり着くことができた。 「随分人がいっぱい居るんだなあ」 「トリステインで一番大きな都だもの、当たり前よ」 ムサシが知る城下というのは、ヤクイニック城下村だけだった。 目の前に広がる光景は、人々が狭い道を所狭しと行き来しているもの。 穏やかな農村であった城下村とは、似ても似つかない。 これも文化の違いか、とムサシはどこか新鮮さを楽しみながらルイズの後に続いた。 「そんなにきょろきょろしてると、田舎者扱いされるじゃない。ほらこっちよ」 「ああ。にしてもなんで、剣を買ってくれるなんて言い出したんだ?」 ムサシは当然の疑問をぶつけた。 使い魔への要求はあっても、ルイズからの施しなど食事がいいところだとばかり思っていた。 ルイズは硬直してギギギ、と音を立てそうな仕草でこっちを向いた。 「そ、それはあれよ…この間あんた言ってたじゃない」 「?」 「ほら!"ニトウリュウ"って……あんた、剣二本持ってたほうが強いんでしょ?」 ルイズがごにょごにょとムサシの方を見ないでつぶやく。 本人としては主が使い魔にご褒美をやっているつもり、なのだ。 だが対象がムサシという異性であるせいなのか─ (ルイズもおいらと一緒にもっと、強くなろうぜ!) (うっせえ!!決闘だ!!ルイズに謝れ!!) 「つ、強いほうが役に立つじゃない……それだけだからね!!」 「なんだよ?変なルイズだな」 「うるさい!」 それとも、自分にも解らないうちに他の意図ができたのか。 ルイズはやけに気恥ずかしく感じてしまっていた。 * * うらぶれた路地の武器屋は、サビた匂いがぷんと鼻を刺激する。 ルイズは顔を軽くしかめたものの、ムサシにとっては慣れた臭いだった。 客に気づいた店主が佇まいをのっそりと直し、二人を値踏みするような目で見つめた。 「いらっしゃってくだすってなんですがねえ、うちは貴族様に目をつけられるようなことなんかしてませんぜ。 至極真っ当な商売をしてまさあ」 「客よ」 ルイズが腕を組んでふんぞり返るのを見て、ムサシも倣って腕を組む。 店主はその言葉に驚いて目を見開いた。 「こりゃおったまげた。貴族が剣をお求めですかい?」 「だって、使うのは私じゃないもの」 「へぇ、ではどちらさんで」 「おいらだぜ!」 カウンターから乗り出した店主が、ムサシの姿を認める。 とたんに豪快に笑い出す。 突然の態度の豹変に、ルイズとムサシはむっとした。 慌てて畏まった店主が身を縮ませ弁明する。 「し、失礼貴族様。ですがねえ、こんなチビ助……ああいやお子様に振るえる剣が、 この店にありますかねえ」 「なんとかしてよ、ここ武器屋でしょ?」 「ナメてもらっちゃ困るぜ、おっさん!」 ムサシが不服そうに腰の名刀を鞘ごと抜き出し、掲げる。 鯉口を切った瞬間閃く真・雷光丸の黄金の剣光を見るやいなや、途端に店主の目が光った。 「……おぼっちゃん!その剣、言い値で買わせていただきやしょう!!」 「売らねえよ!こいつくらい良いモン、置いてないかい?」 目がらんらんと輝く店主がずずいと迫ってきて、ルイズとムサシは後ずさった。 途端にしょぼくれて老けこんだ店主がしぶしぶ店の奥に引込み、いくつか剣を用意してきた。 最初に差し出したのは、長さはここの世界で言うと一メイルほどの細剣。 細やかな装飾のレイピアだった。 「えー、確かに最近従者に剣を持たせる貴族もおりましてね」 「やる気出してくれない?客よ私ら」 「こいつぁ失礼。それというのも、トリステインで話題の盗賊というのが居るかららしいんですわ」 「盗賊?」 店主の話では、なんでもその盗賊は『土くれ』のフーケと言う通り名らしい。 貴族のお宝を片っ端から盗みまくる賊で、皆が皆恐れを抱いている。 故に、自衛のために従者に剣を持たせるのが流行しているそうだ。 ムサシは"盗賊"というフレーズに目を輝かせるがルイズは気づいていない。 剣を眺めながらふうん、とその話に相槌を打ちつつ首を捻っている。 「若奥様、ご不満でも?」 「剣のことはよく解らないけれども……細くない?これ」 「ああ、おいらにゃ細すぎるぜ」 「お言葉ですがねえ、この子の身体にゃ正直これくらいしか合いやせんぜ?」 店主はそう言うものの、ムサシの力を垣間見ていたルイズは難色を示す。 すると、剣を振るう本人がすっ、と進み出た。 「まあ見てなっておっさん」 「うん?」 それは 剣と言うにはあまりにも大きすぎた 大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた それは 正に鉄塊だった ─とでも評されそうな片刃の剣が、店の隅に置かれていた。 よく見れば奇妙な二つの穴が開いている、どこかで金髪のトンガリ頭が振るっていそうなその巨大な剣。 ムサシは"片手"で持ち上げた。 「は!?」 「こいつはちょっと長えけど、このくらいの段平でいい剣はねえか?」 自分の使い魔がゴーレムを細身の刀で両断するほどのパワフルな子供なことは知っていたルイズ。 だが、改めてその怪力を見て驚くやら呆れるやら。 初見の店主はと言うと、くわえていたパイプをポロッと落としてしまう。 ムサシがその鉄塊をぶんっ、と一振りして元に戻したのを見て、店主がバタバタと店の奥へと引っ込んだ。 「あんた…持てるのはいいけど、本当にあんな剣使えるの?」 「おいらはもともと、この鞘に入るくらいの剣を使ってたからな」 ムサシが背中につけた朱塗りの鞘を見せる。 本当にそれに合う剣など存在するのだろうか、と言わんばかりの大きさであった。 「無茶苦茶ねあんた……」 「お待たせしやした!!こちら、こちらはどうでございましょう!一番の業物ですぜ」 見事に飾り付けられた、装飾の無いところを探すほうが難しそうな剣が出てきた。 長さは先程の剣の倍ほどもあり、かなりの幅広の大剣である。 店主が言うには、魔法も込められており鉄をも切り裂く逸品だとか。 「ムサシ、これすごいじゃない。綺麗よ」 「えー……ルイズ、おいらこんなゴテゴテした剣は好みじゃないぜ」 「何言ってるの!その刀?だっけ、それだって金ピカじゃないのよ。もう一本も当然こういうのでしょ」 ともかく手にとってみなさい、と店主に鞘ごと剣を渡すように言いつける。 しぶしぶその剣を取ったムサシ。 ルイズは店主に値段を聞いていたが、不意に大声を上げた。 「エキュー金貨で2000!?庭付きの屋敷が買える値段じゃないの!」 「そう言われましても言わずとしれたシュペー卿の作品でさぁ、このくらいが妥当ですぜ。 なにより剣は命を守るモンでしょう、値が張るのも仕方のないこってす」 「本当なのかしらねえ……」 ルイズはやはり買い物慣れしていないようで、ぼったくりに遭っているのでは?とムサシは心配になってきた。 鑑定屋のボリーじいさんでもここにいればその目利きが大いに役立っただろうに、という思いに駆られる。 すると、はたと気づいたように額の眼鏡を掛けて、まじまじとその手の剣を眺めた。 「?あんた、目が悪かったの?」 「いや、こいつは見たモノを鑑定できる伝説のゴーグルなんだぜ……えーっと、どれどれ。 『ゲルマニアのシュペー卿が鍛えた剣。だが実戦で使うには値しないおかざりの剣で、 鋼鉄を斬るどころか岩にすら負けてしまう 200エキュー』 ……なんだおっさん、こりゃとんだなまくらだぜ!?値段も一桁違うじゃねえか!」 「な、ななな」 「はぁ!?ちょっと、どういう事よ!」 「すすす、すいませんでしたぁーっ!ちょ、ちょっとした手違いみたいで……ええと……」 「ぶわーっはっはは!!とんだチビどもを相手にしちまったな!!」 店主が詰め寄る二人にあたふたと言い訳を連々並べていると、途端に笑い声が響いた。 店に自分たち以外の客がいないはずなのに、とムサシとルイズは驚いて辺りを見回す。 「デル公、今取り込み中だ。お客様にそんな口を利くんじゃねえやい」 「そんな冷やかしのチビ助二人がお客様たぁ、お笑いだ」 「ちょっと!さっきから誰よ、失礼な!」 「こっから声が聞こえたぜ?」 背の低いムサシが、店の一角の棚に手をかけて顔を出す。 するとそこには剣が置かれている。 錆が浮き古びた雰囲気の漂う剣の鞘が、カタカタと鳴りそこから音が漏れているではないか。 「しゃべる剣?驚いたな、どこにでもあるもんだ」 「これって……インテリジェンスソードじゃない?」 「ええまあ……意思を持つ魔剣なんて言われてますが、とんだ厄介モノでさぁ! 客に悪態ついて喧嘩売るわ、脅かして追い返すわでこいつのせいで商売あがったりで…… デル公、今度という今度はてめえをドロドロに溶かしちまうぞ!」 「へっ!やってみやがれ、こんなしょぼくれた店にゃあもう飽き飽きしてたんだ!願ってもねえ!」 店主がずかずかと歩み寄り、お喋りな剣を取り上げようとする。 そこにムサシが口を挟んだ。 「待ってくれ、溶かす前に見せてほしいぜ」 「ムサシ、あんたこんな剣がいいの?」 あからさまな難色をルイズは示す。 どう贔屓目に見積もっても、こんな錆まみれの剣は趣味に合わなかった。 こんな見窄らしいものしか買い与えられないのか、とキュルケあたりが指差し笑うに違いない。 しかし、当のムサシは興味深げだ。 「おいらが前使ってた剣も、しゃべったからなあ」 「えっ……あんた、どんな剣使ってたのよ…」 ムサシが以前愛用していた剣、光の剣レイガンド。 その剣もまた、冒険の最中ムサシに語りかけたことがあった。 と、言っても正確に言えばレイガンドでは無く、そこに封じられた魔人が語りかけたというのが正しい。 ともあれムサシにとってこんな異郷の地でもまた、しゃべる剣に出会えたという奇妙な縁に心踊っていた。 兵法者にとって、物珍しい武器というのは否が応でも手にしたくなるものである。 ムサシはデル公と呼ばれた剣を左手に握り、鞘から抜いた。 柄から切っ先までをじっくりと眺めて、正眼の構えを取ってみる。 「へ、ナリはチビだが案外サマに……お?」 「どうかしたのか?」 「こりゃおでれーた、ガキと思って見損なってた。お前ェさん『使い手』だったのか?」 「なんだい、その『使い手』ってのは」 ムサシは再び『エキシャゴーグル』をかけ直しながら尋ねた。 伝説の武具の能力でこの剣を鑑定する。 銘は『デルフリンガー』というらしい。 なるほどそれでデル公か、とムサシは納得する。 と、握る左手が熱を持っている感覚がして目を向けた。 見ると、朱の篭手の下から光が溢れている。 外してみると、使い魔の契約のルーンが輝いていた。 ムサシは、ルイズと二人で目を見合わせる。 「えーっと『使い手』ってのはアレだ、ほら。あーっと…えー、すまねえ!はっきりとは覚えてねえ」 「なんだよそれ?」 「はっきりしない剣ねえ……ねえ、サビてるし胡散臭いわよこいつ。相手にしないでおきましょ」 「人を見た目で判断するたぁ、まだまだ青いなピンク女。ピンクの割にな」 「剣じゃないあんた」 危うく刀剣にツッコミを入れそうになったルイズが手を引っ込める。 ムサシは黙々とデルフリンガーを鑑定していたが……やがて、驚いたようにゴーグルを外した。 「ルイズ、おいらこいつに決めたぜ」 「えー!?嫌よ私、こんなボロっちい剣」 「おいおい使うのはこっちの小僧だろうが!おい親父!俺の値を言ってみろ!特価だろ!?」 抜身のデルフリンガーがムサシの手でバタバタと喚く。 先程までのからの態度の豹変ぶりにルイズはぎょっとした。 「鞘込みで100って所で結構でさ。この店で一番のがらくたで良けりゃそれくらいでお譲りしましょ」 「おいちょっと安すぎやしねえか!?しかもがらくたたぁ言ってくれるじゃねえか、表出ろ親父ぃ!!」 「お前、買われたいのかそうじゃねえのかハッキリしろよ……」 「言っとくけど100以上なら買わないわよ……」 半ば呆れてきた二人だが、ルイズの財布を開いて覗き込んでみる。 100しかなかった。 な、とムサシが片目を瞑る。 ルイズは口を尖らせながらも、しぶしぶ勘定を済ませるのであった。 「うるさくなったら、この鞘に入れりゃ黙りますぜ。できるかい坊主」 「おう!朝飯前だぜ」 ムサシの背には新たに三本目の鞘が括られる。 彼の身の丈ほどの大剣と呼べるサイズだというのに、器用にムサシは背に剣を収めた。 店主はムサシの頭を大きな手で撫でて笑いかける。 「そいつは愛想が悪ぃなまくらだけど、面倒みてやってくんな」 「ありがとな、おっさん!いい買いモンしたぜ」 「あばよ!俺っちのいない余生は辛気臭ぇだろうが、楽しみやがれ」 なんだかんだで、すっかり人が良くなった店主に手を振って二人と一振りは店を後にした。 店を出て、大通りを逆行して外へと向かう。 しかし、ルイズの方はと言うと未だ納得していないのか憮然とした様子であった。 「ホントにそんなので良かったのかしら……こんなヘンテコな剣じゃ笑われるわよ?」 「おい娘っ子、言うに事欠いてヘンテコはねえだろぉが」 「いや、ルイズ。こいつはとんでもない掘り出しモンだったぜ?」 「うそぉ?だってこんな骨董品以下の剣……」 ルイズは訝しげに背中で揺れる剣を眺めた。 どんな物好きだってゴミとして捨てそうなその外見を見て、改めてため息が洩れる。 「娘ッ子ぉ、そりゃねーぜ。そりゃ俺、いろいろ忘れてるけどもさ」 「いいよ、帰ったら説明するからさ。これからよろしくな、デルフリンガー」 「おう、俺っちのことはデルフでいいぜ。相棒、名前を教えてくれや」 「おいらは、ムサシだ」 人ごみを抜け、都の外に繋いである馬に乗り込む。 日はまだ正午、といったところか。 「ちょっと!何で私の前にあんたが乗るのよ」 「後ろにしがみつかれるより、こっちのがルイズのが楽だと思ってさ」 「い、いいからあんたは後ろ!しがみつかれて嫌がるほど心狭くないわ!」 「ケケケ、言うねえ娘ッ子。本心は違うんじゃねぇか」 帰路は行きより、少し騒がしくなりそうであった。 前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/310.html
ルイズはキュルケとの関係を食堂へ行く間におとーさんに説明しました。 「おとーさん、いい?わかった?これからキュルケとキュルケの使い魔とも話もしちゃだめだよ」 おとーさんはちょっと悲しそうにポツリと呟きました。 「・・・なかよく」 ルイズにはこの時おとーさんの呟きは聞こえませんでした。しかし、後にルイズはその言葉を聞くことになります。 アルヴィーズの食堂に着くと大きく豪華な食堂についての講釈をルイズが始めましたが、おとーさんはあまり聞いてはいないようです。その後椅子を引かないおとーさんをルイズは怒り説明します。周りの生徒はその様子を見ながらクスクス笑っています。そして、ルイズはおとーさんの食事を床に置かれた木箱の上の質素をはるかに下回るパンとスープであると説明しました。 (私は豪華な食事。おとーさんは床で質素な食事。これで上下関係をしっかり認識してもらうわよ) 始祖ブリミルへの祈りも終わり食事が始まるとおとーさんは汗を流しながら料理を見ています。そして、徐に口に運ぶと・・ 「う、うまい」 と言いながらごく普通に食べていました。 (もも、もっと質素にすれば良かったのかしら・・・) その様子を見ながらルイズは作戦が空振りだったなと思っていましたが、思いもよらぬ出来事が起こりました。 おとーさんが食事を終わった時、他の生徒はすでに食べ終えていました。しかし、ルイズは食べるのが遅くまだ食べていました。そんなルイズの元におとーさんが近づいてきました。そして、ルイズが食べ残していたサラダを指差すのでした。 「な、なによ」 「からだにいい」 「え? ほっといてよ!私このサラダ嫌いなのよ」 ちょっと怒っているルイズに対しておとーさんはさらに近づき。 「からだにいい!!」 おとーさんの迫力に押されてしぶしぶサラダを食べるルイズでした。ちなみに、ルイズも身体にいいならと、おとーさんにはしばみ草のサラダを食べさせました。もちろんさっきの仕返しのつもりです。しかし、モリモリと食べるおとーさんにそれ以上何もいえなくなりました。少し離れた席でその一部始終を見ていたタバサはおとーさんのはしばみ草の食べっぷりにはしばみ草の愛好家として物凄い親近感を覚えるのでした。 朝食が終わるとルイズはおとーさんを教室へ連れて行きます。 教室には生徒とその使い魔が居ました。もちろん、大きくて教室に入りきれない使い魔は外に居ましたが。おとーさんは使い魔なので他の使い魔と一緒の場所にいることになりました。 シュルヴルーズが教室に入ってきて授業が始まりました。ふと、ルイズはおとーさんの様子が気になりその方を見てみました。 すると、使い魔たちが一匹ずつおとーさんへ挨拶をしているような光景がそこにはありました。 (そういえば・・・今朝キュルケのサラマンダーににらめっこで勝ってたみたいだけど・・・結構強いのかしら?) そんな事を考えながらよそ見していた所を運悪くシュルヴルーズに見つかってしまいます。 「ミス・ヴァリエール、授業中によそ見とは余裕があるようですね。」 「え? あ、ははい」 完全によそ見していた事がばれてしまったルイズは錬金の魔法をするように言われました。他の生徒は口々にシュルヴルーズに対してルイズにさせる事が危険だと言います。ですがシュルヴルーズは再度ルイズに錬金するように言いました。ルイズは失敗しないように頑張っていつも以上に集中しました。使い魔の前で失敗したくなかったからです。生徒たちは机の下に隠れたり外へ避難したりしました。 そして、いつも以上に集中していた為にいつも以上の盛大な爆発が起こりました・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4823.html
前ページ次ページルイズの魔龍伝 7.意思を持つ剣 ブルドンネ街の武器屋の中は、さほど広くない店内に乱雑に武具や防具、甲冑がひしめいており 昼間でもそこはランプが必要なぐらい薄暗かった。 「…こんなチンケ場所でさぁ、やましい事はなんもありゃしませんぜ」 カウンター奥の椅子に腰掛けた店主が先ほどとは違った真面目な声でルイズに対応する。 こんな場所に殆ど貴族は来ないのだろう、店主はルイズ達を役人かそれに関係した人物と勘違いしていた。 「何言ってんのよ、私は客よ客」 「はえぇ?こりゃあ驚いた!貴族様といったら杖を振るうって相場が決まってまさぁ! こりゃおったまげたってもんです、一体何をお求めですかい若奥様」 「違うわ、私じゃなくてこいつに合う剣が欲しいの」 軽く驚いた様子の店主にルイズが後ろに立っているゼロを指差す。 店主がフードをすっぽり被ったゼロを不審そうに見るもののとりあえず自分の中で理由をつけて納得した様子で 「へいへい、最近は土くれのフーケとかいう賊がここらを荒らしまわってるって話ですからねぇ。 従者さんに剣を持たせておくってのも悪かねぇですな。従者さん何か欲しい得物はありやすかい?」 「…剣だ、片手でも両手でも構わん」 とゼロとやり取りをした後に店の奥へと引っ込んでいった。 「土くれのフーケ…なんだそいつは」 「最近有名になってるメイジあがりの盗賊よ、土くれって名の通り壁でもドアでもなんでも 土くれにしちゃうんだってさ。ここら辺に出るなんて初耳だけど、まさか魔法学院にまでは押し入ってこないでしょ」 ゼロの質問に店に飾ってある武具を物色しているルイズが答える。 「メイジは貴族なんだろう?さっきのゴロツキもそうだがなんでそんなのに身をやつす必要があるんだ」 「親からの勘当…家自体の没落…ま、色々あるけど珍しい事じゃないわね」 「力に溺れ弱い者を虐げる…なってない奴らだな」 「『貴族は魔法を持ってその精神と為す』ってよく両親から言われたわね。 まぁ…魔法が使えない私じゃ身にやつしようがないか…」 「そうふて腐れるな、心意気は立派じゃないか」 「でも…魔法を行使できないんじゃ心意気があっても付いてきてくれる人なんていないわよ」 しばらくすると店主がいくつかの剣を抱えながら戻ってきてそれらをカウンターの上に並べた。 「この店にある自慢の品ばかりでさぁ、そうですなぁこの剣なんかいかがでやしょ?」 そう言うと置いてある一つ剣を手に取りゼロに渡す。 それは両刃の剣であり、柄に当たる部分には十字の飾りが配置されそこから左右に 扇状の飾りが蝙蝠の翼のように突き出ていた。 「その名も“鳴動の剣”!一振りすれば周囲が震える程の剣気を放つ無双の剣でさぁ! こいつがあればフーケだってたちまち切り伏せられる店で一番の名剣ですぜ!」 「(うぅむ、これは俺から見ても立派なものだ)」 フードの奥で目を光らせながら手にした剣を眺め、口に出さないながらも感心するゼロ。 「強そうじゃない、値段は?」 「エキュー金貨で六千でさぁ」 「エキュー金貨で六千!?上級貴族でもそうそう手が出せる金額じゃないじゃない! ゼロ一つ多いんじゃないの!?無理よ無理無理」 ルイズが必死に首を降るさまを見てゼロは仕方無さそうに剣をカウンターの上に戻した。 「名剣は何者にも代えがたいもんですが…じゃあこれでどうでしょうかね。 これこそはかの高名なゲルマニアの錬金術師シュベー卿が鍛えた名剣でさぁ! 何せ剣に魔法がかかってます、そこらの鉄なんて一振りでぶった切り!」 次に店主が手に持ったのは先ほどの剣と比べるとなんとも派手であり そこら中に配置された宝石がランプの光を反射して煌いていた。 「うわぁ…これも強そう、価格は?」 「こちらは新金貨三千で結構ですぜ」 「…チェンジ」 「つかぬ事をお聞きしますが、予算はどれほどで?」 「新金貨三百っ!」 価格の駆け引きもせず(した所でとうてい買える額ではないのだが)、今の剣の価格の十分の一という予算を 堂々と答えるルイズにすっかり飽きれた店主はカウンターの上の剣を片付けつつ冷たく答えた。 「そこの壁にかかってる剣なら街の衛兵も使ってる普通の剣で、二百で結構でさ」 店主が壁にかかってる剣を指差す。そこには普通の、飾り気の無い両刃の鉄剣がかかってあった。 「こんな普通の剣でも予算の三分の二も使っちゃうのね」 「それでも百余るじゃないか。俺の寝具なんて質素なものでいいんだよ」 「むぅ…剣って思ったより高いのね」 「ヘッ、ここは世間知らずのお嬢ちゃんが来る所じゃねぇよ!次はそっちのフードの奴だけで来な!」 と、何処からともなく男の、それも兜をつけて喋っているかのような金属音の入り混じった声がした。 周囲を見回すゼロとルイズだが店主以外は所狭しと並んだ武具しか見当たらない。 「うるせぇぞデル公!小額でも高額でも客は客でぇ、大事にするってもんよ!」 「なーにが“大事にする”だよ! その金貨六千と三千の剣だってどっから仕入れたかわからねぇ半分眉唾もんじゃねーか!!」 店主の顔は『特価品』と書きなぐられた紙の貼ってある、乱雑に剣の積まれた一角を向いており 声もまたそこから発せられていた。 店主と謎の声が言い争いを続ける中、ゼロがその特価品の積まれた一角を漁り一振りの剣を引きずり出す。 「今の声、これか?」 「剣って事は…もしかしてインテリジェンス・ソード?」 「そう、意思を持ち自ら喋る魔剣って奴です。どこの酔狂な魔術師が始めたんだが知らねぇですが なにもこんなオンボロまでそうしなくてもいいってもんですぜ。 口が悪い、客に喧嘩は売る、そろそろ溶かして地金にしちまおうかと考えてますよ」 ゼロが手に持っているそれは質素な拵えの片刃の長剣で丈夫そうには見えるものの、 しかし表面のあちこちに錆が浮いており実用的かと言うと少し心もとなかった。 「やってみやがれってんだ!その前におめぇさんを叩き斬ってやるよ!」 鍔元をカチャカチャと動かしながらその剣はまだ喋っていた。 造りこそしっかりしているものの、状態が良くないのと口の悪い喋りが喧しいので ゼロがその剣を特価品の一角に戻そうとした時であった。 「ん゙ー…? おでれーた、おめぇ“使い手”だな。だが俺の知ってる“使い手”とはちぃと違うな。 しかもおめぇ人じゃねぇ、かといって幻獣でもねぇ、一体何モンだおめぇ?」 「! お前は一体…」 「まぁいい、俺を買え。あんた位の使い手なら俺を使っても損はしねぇぜ」 ゼロは驚きを隠せなかった、確かにこの距離ならゼロの顔は見えるかもしれない。 しかしこの剣はゼロをはっきりと「人じゃない」と判断したのだ、只の喋る剣じゃないとゼロは直感した。 「ケッ、なんだおめぇ急に俺を買えだなんてよぉ。急に自分が可愛くでもなったか?」 「こんな剣いらないわ、さっきの剣にしましょうよ」 「店主、これはいくらだ?」 ゼロは剣を元の場所に戻すのをやめ店主に値段を聞くが、当然ルイズは嫌な声を上げる。 「これ買うのォ!?やめときなさいよこんなオンボロ!」 「どうやら俺っちの真の魅力に気づいてくれたようだな! やい娘っこ!おめーさんが剣を振るうわけじゃねーんだ、すっこんでろ!」 「確かにそうだけど…本ッ当にいいの!?こんな口の悪いオンボロ!」 「あぁ、これでいい」 ゼロの言葉に渋々ルイズは値段を店主に聞いた。 「…まぁ貴方がそう言うなら仕方が無いわ。このオンボロはいくら?」 「そうですなぁ、本当は百でやすがその二百の鉄剣を買うんでしたら五十で売りやす。 これ以上置いても売れそうに無いし、厄介払いの大幅値引きって事でどうでやしょ?」 「あの鉄剣も一緒じゃないと駄目なの?」 「へぇ、オンボロだけだと百はいただきまさぁ」 「う~ん……」 「…じゃああの鉄剣とそのオンボロ、合わせて二百五十で買うわ」 「へぇ、毎度あり」 ルイズが自分のとゼロの金貨袋から代金をカウンターにじゃらじゃらと撒き、店主が勘定をしている間に ゼロは手に持った二振りの剣の、インテリジェンスソードの方を見ていた。 「あーこんな所出られてせーせーすらぁ!俺はデルフリンガー、デルフでいいぜ!」 「うるさいと思ったらこうやって鞘に収めとけば黙りまさぁ」 「あってめ何すr」 勘定の終わった店主が鞘にデルフリンガーを収めるとさっきまでの喧しさはピタリと収まっていた。 思ったより高くついたと言わんばかりの顔をしたルイズと共にゼロはその店を後にしたのであった。 「俺は二振りも剣はいらなかったんだが…」 「だってあのオンボロ絶対なまくらよ?アンタが使ったら一回斬っただけで壊れちゃうわ。 鉄剣だけにしとけばいいのに」 「ケーッ!物を知らねぇ貴族の娘っ子が生意気な!」 引き続き裏通りを歩く二人と一振り、鞘から喋れる程度に少し抜かれた状態のデルフとルイズが 早速口喧嘩をしていた。 ゼロはデルフリンガーを大きく張り出した右肩の鎧、ライトティアースに固定し鉄剣の方は片手に持っていた。 纏ったローブから覗くライトティアースが日光に反射してブルーの光を放っている。 「言っておくけどガンダムの主人は私なのよ、つまり武器であるアンタも私に従属するわけ!」 「おい、この娘っ子が主人でいいのか?」 「問題無い」 「物好きだねぇ」 「まず、武器はアンタじゃなくて鉄剣の方を使ってもらうからね!」 「…なにおぅ!?やい、剣を振るうのはおめーさんだ、何か言ってやんな!」 「ふむ、切れ味を比べてみるか?」 「こ、こんな道の真ん中で何してんの!?」 そう言うとゼロはその場でデルフリンガーを抜き、ルイズに鉄剣を押し付けた。 後ろを向いたゼロが曲がり角の死角になっている部分に向かって呼びかける。 「コソコソとどういうつもりだ、さっきのゴロツキの仲間か?」 デルフリンガーを構え見据えていると、そこから申し訳無さそうに人影が出てきた。 「ゴメンなさいね~、別に襲うってつもりじゃなかったのよ」 「キュルケと…キュルケとよくいっしょにいる青い髪の……」 「あータバサよタバサ」 曲がり角から出てきたのは、申し訳無さそうな顔のキュルケと本を抱えているタバサであった。 「いやぁ~、偶然ゴロツキと戦ってるところを目撃しちゃってねぇ。 詠唱と杖抜きで雷を放つもんだから驚いちゃって、思わず気になって後を着けちゃったのよ」 所変わってゼロとルイズとキュルケとタバサ、カフェテラスで昼食を摂っていた。 無論ゼロは表向きゴーレムなので座っているだけで目の前には何も置かれていない。 「ふーん、あ、そ。ツェルプストー家の下賎な女は覗き見が好きなのねぇ」 「あーら興味のある事には果敢に挑むのがツェルプストー家ですのよ? 保守的なヴァリエール家には真似できないでしょうねぇ」 お互いに牽制しながら昼食のパンやスープを口に運ぶキュルケとルイズ。 そしてそれをよそに一人黙々と本を読みながらサラダを食べるタバサ。 「(女三人寄れば何とやらと言うがなぁ…)」 目の前の卓を囲んだ状況はなんとも言えない異様な雰囲気であった。 「キュルケはわざわざ何しに来たのよ」 「朝起きたらタバサが出かける準備をしててね。ブルドンネの古本市に行くって言うからからついてったの。 私もついでに色んな人から貰ったプレゼントも結構な数になったし、そろそろ処分しなきゃねーって事で質屋に」 「…そろそろ刺されるわよ」 「あーら、話されない誘われない貰えない可哀想な人が何か言ってるわぁ」 「…~っ!ガンダム斬って!この女今すぐ斬り捨てて!何なら雷のあれ使ってもいいわ!」 「聞きたい事がある」 ぎゃあぎゃあ他の客の目も気にせず騒ぐルイズとキュルケに頭を痛めていたゼロに何者かが話しかける。 ふと見るとタバサがこちらを向いていた、しかもそのまま口に次々とサラダを放り込みつつ。 「あ、あぁ、こいつ等は暫く放って置いても大丈夫だろうし」 「貴方は何者?少なくともゴーレムじゃない」 「…何故そう思う?」 「一つ、ゴーレムは魔力で作る操り人形。意思は持たない。 二つ、意思を持つマジックアイテムだとしてもその可能性は低い。 動くだけならともかく、あの威力の雷を発するには膨大な魔力と複雑な機構を必要とする」 「…ご名答、だな。周りがそう言うからそうしているだけで、確かに俺はゴーレムじゃない。 俺はユニオン族という種族だ、厳密にはユニオン族ガンダム種で…まぁこれはいいか」 「ハルゲキニアでは聞かない名前、どこから来たの」 「……遠い、とても遠い場所としか言えないな」 「ロバ・アル・カリイエから?」 「ロバ…?」 「私達の住んでる大陸のずっと東、エルフのいる場所を越えた所をそう呼んでいる」 「まぁ、そんな所かな」 矢継ぎ早に質問をするタバサだが、そのペースは途切れる事は無い。 ついでにサラダを口に運ぶペースも途切れず、タバサの手元には何皿も皿が積まれていた。 「貴方の出した雷、あれについて聞きたい」 「俺の使う技だ、多分そっちでいう魔法とは違うと思う」 「何故、呪文や杖を使わず雷を出せるの?精霊と契約している?」 「俺はユニオン族の中でもごくごく少数の“雷の一族”という奴でな。 まぁどういうわけか修練を積むと先のように雷を扱える。半分血筋で出しているようなもんだ」 異世界なんて到底信じないだろうから(まず自分自体この世界の者にとっては信じられないだろうが) そこら辺だけはぼかしつつ自分の事を話すゼロ。 「…ありがとう、大体分かった。貴方も食べる?」 そう言うとタバサが皿をずいっ、とゼロの前に突き出した。 白い皿には深緑の柔らかそうな草がこんもりと盛られており青臭さがずっしりと匂ってくる。 質問に答えたお礼なのだろう、ならば一皿だけは…と思いそれを一口噛み締めた瞬間だった。 「…! ? !!!!!!ぐっ……」 例えようの無い苦味が口の中いっぱいに広がった、その苦味に一瞬悶絶しそうにはなるが何とか飲み込む。 「これは何だ…薬草の…類か?」 「はしばみ草、体にとてもいい」 壮絶な苦味に耐えつつ一皿を消化する頃には、キュルケとルイズの言い争いも静かになっていた。 が、昼食の後、枕やシーツ等ゼロの寝具を買っている所に事あるごとにキュルケが 「ヴァリエールよりいいの買ったげるから使い魔にならない? 使い魔になったら武器防具好きなの何でもドンと来いよ~」 とルイズをからかうように話しかけてきたせいで昼の言い争いが再燃してしまうという やっぱり頭の痛くなるような買い物になってしまった。 「…ったくツェルプストー家の女ってのはァ!」 「気持ちは分かるがルイズ、落ち着け」 「あーら、貴方も随分とお堅いのねェ」 「チャラチャラした奴は好かん」 街の外の停留所までやってきた四人、ゼロは背中に寝具とデルフ、手には鉄剣、すっかりフル装備状態であった。 「相棒ぉ~、馬に乗れるか?」 「大丈夫だ」 その様を心配し、話せるぐらいまで鞘を抜け出たデルフリンガーが話しかけてくる。 乗って来た馬の横にはタバサのシルフィードとキュルケのサラマンダーが暇そうに横になっていたが 四人の姿を認めると楽しそうな鳴き声で出迎えた。 馬にゼロが乗ろうとした途端、シルフィードがゼロをぱっくりと咥えその大きい背中にひょいと乗っけた。 「ななっ!何だ!?」 「シルフィードが乗せたがってるみたい」 そう言いながら背中にタバサが、いつの間にかゼロの後ろにサラマンダーが乗っていた。 「馬二頭いるのよ!?どうすんのよー!」 馬にまたがったルイズの叫びに応えるかのように、自分の背中に乗ろうとしていたキュルケを咥えると ゼロが乗っていた馬の横に置いた。 「ちょ、ちょっと私はこれで帰れっての!?」 「きゅいきゅいきゅいーっ!」 ひと鳴きするとシルフィードはその大きな翼をはためかせ上昇していった。 「あーら、ツェルプストー家の女は乗馬の一つも満足に出来ないのかしら?」 ルイズは嫌味たっぷりにそう言い放つと馬を走らせ去っていった。 「ふ…ふふふふ……ヴァリエール家のぺったん娘め、その言葉学院で後悔させてやるーっ!!」 一人残されたキュルケは素早く馬に跨ると燃えるような瞳をギラつかせながら馬を走らせルイズを追った。 「…馬に速度をあわせてくれると助かる」 「下を走る馬二頭、速度合わせ、高度そのまま」 「きゅい」 タバサの命令にシルフィードは答える様に短く鳴くと、馬に速度を合わせゆっくりと翼をはためかせた。 遥か下の街道ではルイズとキュルケの馬が抜きつ差しつつのデッドヒートを繰り広げている。 「気遣いはありがたいが、下があぁじゃなぁ…」 「今のは私じゃない、シルフィードがやった事」 申し訳無さそうなゼロに背びれに背を預け本を読んでいるタバサが答える。 「こいつが?」 「ご飯の面倒とか良く見てるから、そのお礼だと思う」 「きゅいきゅ~い!」 まさにそうだと言わんばかりにシルフィードは鳴いた。 「デカいのは分かるが、飼い主なら飯の面倒ぐらいちゃんと見ろ。こいつ大体の時間腹を空かしているぞ」 「方針は自給自足」 「…そうか」 「きゅい~…」 オレンジ色の太陽の光がシルフィードごとゼロを、タバサを、サラマンダーを照らす。 「流石にこの高度なら問題あるまい」 身に纏ったローブを脱ぎ、本来の姿を晒すゼロ。 「そうだ、デルフリンガー」 「どしたい相棒」 「俺の名前を言ってなかったな。俺はゼロガンダム」 「おぅ!じゃあこれからはゼロって呼ばせてもらうぜ!アンタも遠慮しねーでデルフって呼びな!」 「フッ…いきなりゼロとは図々しい奴だな。デルフ、よろしく頼む」 「図々しいのは余計だがあたぼうよ!」 暮れ行く夕日の光が、ゼロの鎧に反射し金色に輝いていた。 前ページ次ページルイズの魔龍伝